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会報連載記事

食育について(5) 香川県綾南町立滝宮小学校 氏家敏文

香川県(前)滝宮小学校校 長竹下和男

子どもが主役の「弁当の日」

本校に赴任する前の年、滝宮小学校の「弁当の日」の記事が新聞で少しだけ紹介されていた。

私は、タイトルだけを見て内容を読まずに「弁当の日」ぐらいで新聞記事にするぐらいだから余程地域ネタがなかったのだろうなあとか、たまたま滝宮小学校の話題を紹介する順番になっていたんだろうなあぐらいにしか思っていなかった。

「弁当の日」ぐらいでと思った理由は、学校給食の代わりにお弁当を食べる日を位置づけただけだと思ったからである。しかし、本校に赴任することになり、大きな誤解に気づかされることになる。

「弁当の日」とは、学校で弁当を食べるのには違いないが、作るのは親ではない。子ども自身が作るのだ。「弁当の日」の主役は、子ども自身なのである。子どもが主役の「弁当の日」には、子どもたちへの二つの大きな宝物のプレゼントがあることに気づいた。

一つ目のプレゼントは、「家族とのふれあいがより密になり、家族への感謝の心が育つ」ということである。

ある調査によると、「食事の時間は楽しいですか」という問いかけに対して、「何とも思わない」や「楽しくない」と答えた子どもが半数近くいたそうである。楽しくない理由は、一人で食べているからとか会話がないからということだった。一家団欒の場である食事の時間がこれでは悲しすぎる。

子どもが主役の「弁当の日」は、特に意識をしなくても必然的に親子のコミュニケーションが生まれる。弁当を作るために、材料の切り方、調理の仕方、火加減などについて親に聞くことになる。また、親の方もどんな味になったのかなどと質問することになり、「弁当の日」を窓口として会話が広がっていく。そして、こんなにも大変な思いをして食事を作ってくれていたんだということにも実感として気づくことで、感謝の気持ちも育つのである。

二つ目のプレゼントは、「小学生の段階から栄養のバランスについて考えることができる」ということである。

食育とは、食べ物の知識や栄養について教育することである。そのねらいの一つに、栄養のバランスを考えるがある。

私自身のことだが、学生時代にはとても痩せていた。だから、何とかして太りたいとずっと思っていた。そこで、お好み焼き、焼きそば、カツ丼など何も考えずに食べること、食べること。そんな努力が一応実り、体重は十分すぎるほど増えたが、異常に疲れやすい体になってしまっていた。少し運動するとしんどいという状態が何年も続いた。

栄養のバランスを考えるということは、食べ盛りの子どもたちや青年にとって第一義とはならず、頭で理解していても、欲しいものを食べてしまうことになりやすいのではないだろうか。その結果、成人病やそれに近い状態になってしまい、そうなってからようやく本気で栄養のバランスについて考えるということも少なくないのではないだろうか。

子どもが主役の本校の「弁当の日」は、子どもが栄養のバランスを考えて弁当作りの計画書を作成する。これを家庭科担当の教師がチェックし、栄養のバランスをより高めていく。このような段階を経て、自分で弁当作りをする。弁当作りを体験しているからこそ、栄養のバランスについて、実感として考えることができるのである。

子どもが主役の「弁当の日」の二つの大きな宝物のプレゼントについてふれてきた。最後に、ある児童の「弁当の日」の感想を紹介する。

「弁当の日は、早く起きなければならないので、お母さんの苦労が分かりました。また、今までは、料理に関心が全くなかったけれど、弁当の日のおかげで興味がわいてきました。それと同時に、家庭科の授業で栄養素を習いました。もし、栄養素を習ってなかったら、栄養のバランスのとれたお弁当はできなかったと思います。(後略)」

子ども主役の「弁当の日」は、子どもたちにとても素敵なプレゼントを残しているのである。

次号へつづく