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会報連載記事

食育について(2) 香川県綾南町立滝宮小学校の実践事例

香川県綾南町立滝宮小学校校長 末澤敬子

「弁当の日」3年目を終えて

「弁当の日」が、本校で始まって丸3年が経過した。これは、前竹下和男校長の提案によってスタートしたもので、その時の三つの原則は今も引き継いでの実践である。その原則とは次の3点。

(1) 親は手伝わないで、すべてを子どもがする。
(2) 対象は5・6年生のみ。
(3) 実施は10月から、毎月第3金曜日の月一回。

2月20日の今年最後の「弁当の日」を実施した後、子どもや保護者に感想を書いてもらった。それまでも子どもの意欲は「弁当の日」の生き生きとした表情から感じていたが、子どもの言葉でつづられた感想文には、どれも実感が込められていた。

「今もそうだけど、早く起きるのが苦労でいやでした。」「朝起きるのが大変で、5時45分にセットして早く寝ました。ねむいし、寒いし、包丁を使って切る時少しこわかったけど、だんだん慣れてきて良かったです。」とそこには「弁当を作るなんて簡単、やさしいこと」と思った子はただの一人もいなかった。

どの子も「弁当作りは楽じゃない。めんどうくさい。難しい。」と実感している。眠い目をこすりながら早起きした苦労、材料の切り方や作り方が分らなくて時間がかかったこと、こげたり油が飛び散ったりして困ったこと等、自分が実際に調理してみて、大変さを痛感している。料理を作るには、何と数多くの仕事があって、手間のかかることが多いことか、と思ったに違いない。

ところがである。子どもの感想は異口同音に次のように続いて、とても興味深い。

1つ目は、大変だったけど作ってよかった、とある。「弁当ができ上がった時、ものすごくうれしかった。」「家の人に『うまくできたなぁ』と言われて安心した。」と満足感とやる気にあふれている。苦心して自力で作りあげただけに、その喜びと自信は大きい。「短時間で作れるようになった。里芋の煮つけができるようになった。今度の“弁当の日”が楽しみ。」ともある。

2つ目は、食事を作る母親や周囲の人の苦労を知ったことである。「こんなえらい目をお母さんは毎日している。朝、昼、晩と栄養のバランスも考えてしているのがすごい。」「お母さんの作った遠足の弁当は、やっぱりおいしい。」「給食を作る調理員さんも苦労していると思うので、残さずに食べよう。」と周囲の大人に感謝する気持ちが生まれている。

3つ目は、友達の作った弁当を誰もけなさない、ということである。「きれいにできとる。上手ね。」の言葉が教室で飛びかう。早朝からのがんばりを、お互いに心底から知っているので、みんな笑顔で友達をねぎらい合っている。「うわぁ。そのお弁当おいしそう。今度作り方を教えてね。」と学級の誰もが認め合い、ともに伸びていく優しさが育っている。

この「弁当の日」の実践で、私が確信できたことは、子どもに「困難の体験」をさせることの大切さである。困難といっても、克服の難しい課題でなく、自分の食べるお弁当を作るという、ほんの少しの努力と辛抱と知恵があれば実現できる楽しい課題である。

自分が困り、失敗し、それを乗り越えて自力で弁当を作りあげることができたうれしさとその達成感が、子どもに自信と感謝と共感の気持ちを育てたことは確かだ、と思う。台所に立って、手や五感を働かせて料理に四苦八苦したことが、多くの生きた学習となったのであろう。小さな弁当作りの取り組みではあるが、これは食事から人を育てるという食育そのものである。

最後に、6年保護者の感想を記したい。

「男の子でもあり、料理をさせると、わやになり手間もかかるので、あまりさせたことがありませんでした。いざ“弁当の日”が始まると、包丁もあまり持たせたことがないので、悪戦苦闘、何も知らない、何もできない、根気がない、親としてショックでした。しかし、子どもは覚えも早く、上達し、カロリーや栄養のバランスまで考えるようになってきました。“弁当の日”は子どもと向き合う、いい機会を与えてもらった、と思います。」

次号へつづく