
拓殖大学国際開発学部教授 長坂寿久
21世紀に入って、欧州のフェアトレード市場は急速に拡大してきている。この程発表された『欧州のフェアトレード2005年』報告書(2月20日発表)によると、2001〜05年の5年間に、欧州のフェアトレード市場は年率20%で急成長してきた。
この報告書は、フェアトレードの国際的なネットワーク組織である4団体が共同して、欧州25カ国について調査を行なったもので、4団体により設立されたEU(欧州連合)向けのロビー事務所(フェアトレード・アドボカシー・オフィス)から発表された。
参加している4団体とは、先進国のフェアトレードNGOや生産者が加盟している国際組織「IFAT」(国際フェアトレード組織連合)、フェアトレードの認証団体である「FLO」(フェアトレード・ラベリング国際機構)、それに欧州のフェアトレード・ショップ団体(世界ショップ)である「NEWS??」(欧州ワールドショップ・ネットワーク)と「EFTA」(欧州フェアトレード連盟)である。
同報告書によると、フェアトレード商品の小売売上高は、2001年の2億6,000万ユーロから、5年後の2005年には6億6,000万ユーロへ2.5倍もの高い伸びを見せた。これは年率20%増に相当し、フェアトレードは世界でも最も急速な伸びを示した市場の一つとなっているとしている。
フェアトレード商品を販売する小売店(ショップ)数は、5年前の6万3,800から7万8,900へ24%増えている。
ショップ形態は、フェアトレード専門店としての「ワールドショップ」が2,740から2,854店へ4%へ増加したが、「スーパーマーケット」が4万3,100店から5万6,700店へ32%と大きく増えている。「その他」の形態のショップは1万8,000から1万9,300店の7%増であった。つまり、フェアトレードの専門店数はゆっくりした伸びに留まったが、スーパーでの販売店舗数が急増してきたことが、フェアトレード市場拡大をもたらした主たる要因となっている。
これは企業がスーパーの棚に置くことを目指してフェアトレード・ラベリング団体(FLO)の認証商品を扱うケースが増えたことによる。その中ではとくにコーヒーとバナナの急増が目立っている。
FLO(フェアトレード・ラベル)運動はすでに欧州では15カ国に広がっており、小売売上額は5億9,700万ユーロに達している。前記の5万5,000のスーパー店舗で扱われているのはほとんどがこれらフェアトレード・ラベル商品である。
〔注:FLOに参加している国は欧州では15カ国だが、スペインは05年10月加盟のためこの売上額の中には含まず。また欧州以外では米、カナダ、日本が加盟している。〕
現在、世界の58カ国以上の開発途上国で600万以上の生産者・家族がフェアトレード生産の恩恵を受けている。これらを先進国(欧州)に輸入しているフェアトレードNGOは約200団体あるという。また、フェアトレード運動の中で働くボランティアはフルタイム換算で10万人で、主としてワールドショップなどのフェアトレード専門店はこれらボランティアに依存している。
特定の国ではフェアトレード商品はすでに大きなシェアを占めるに至っている。スイスでは、バナナ市場の47%を、生花市場の28%、砂糖市場の9%をフェアトレード・ラベル(認証)商品が占める。英国は人口ではスイスの8倍だが、紅茶市場の5%、バナナ市場の5.5%、コーヒー市場の20%をフェアトレード認証商品が占めている。
現在では、フェアトレード商品は1,100品目以上に及ぶ。蜂蜜やマンゴーからバラや綿のTシャツまで。コーヒー、ココア、紅茶、砂糖、さらにクラフト類からファッション衣料まで。フェアトレード・ラベルの認証マークを知っている人は英国では50%に上る。また、英国ではすでに2000年から「フェアトレード・タウン」宣言制度を導入しているが、これも急速に拡大して現在の宣言都市(町)は130に達している。
報告書はフェアトレードの今後の課題として、団体別に以下を指摘している。
(1) ワールドショップ伝統的にフェアトレード運動を牽引してきたショップ・グループで、フェアトレードに特化した専門的な運営を行なってきた。課題として、@その専門性を今後とも追求しつつフェアトレードの成長の源として今後どう位置づけていくか、A消費者に対して信頼性を確保する上からも今後モニタリング・システムをどう導入していくか、BビジネスとNGOとしての(政治的)活動とをどう適正にバランスさせるか。
(2) ラベリング(認証)団体(FLO) @急速に成長しているが、効果的な運営を今後どう行なっていくか、A多国籍企業などのビッグ・プレーヤーがフェアトレードに参入してきており、これらとどう協働して新しい改革的な道を造り上げていくか、B基準化への動きと規制化への傾向との間のバランスをいかにとっていくか。
(3) フェアトレード輸入団体@生産者側と消費者側からの要請の競合にどう対応するか、A増大する競争に直面して、ブランドと企業へのロイヤリティをいかに構築するか、Bスーパーマーケット以外でも成長できる新しいソースをどう造り上げていくか、C輸入NGO間の協働を強化していくこと、などを指摘している。