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会報連載記事

フェアトレード(19) フェアトレード・タウンについて

拓殖大学国際開発学部 長坂寿久

2000年5月に英国のガースタング(Garstang)が世界初の「フェアトレード・タウン」を宣言した。以来、5年間のうちに英国内ではフェアトレード・タウン運動がまたたく間に広がり、現在では110都市以上が認定を受けるに至っている。地域的広がりは多様で、タウンでなく、フェアトレードシティ、フェアトレード・ゾーン(地域)の名称もある。
これまでの欧米におけるフェアトレード運動の広がりのプロセスを見ると、自治体における理解と普及が大きな契機と役割を果たしてきた。オランダではすでに90年代前半にほとんどの自治体が、市役所などの職場や公的な場ではフェアトレードコーヒーなどを使用するのが普通となっていた。

90年代後半の英国におけるフェアトレード商品の開発と普及は目をみはるものがある。生協とスーパーが大きな牽引者となってきた。英国では生協がフェアトレード市場の30%を占めている。自治体のシェアもとくにコーヒー、紅茶などではかなりを占めている。また、ブレア首相をはじめ政治家を巻き込んだキャンペーンも功を奏したといえる。しかし、フェアトレード・タウン運動の波及が、英国のフェアトレード市場のその後の基盤を創りあげていると思われる。

英国のフェアトレード・タウン運動を主として推進してきたのは、OXFAM(英国で誕生した国際的な開発協力NGO、オックスファム)と、フェアトレード・ラベル(認証)団体である「フェアトレード・財団(ファウンデーション)」である。フェアトレード・ラベル団体(FLO)は、ドイツに本部がある国際的なフェアトレード認証団体で、日本にもその支部機関としてフェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)がある。発端はオランダで始まったマックス・ハーフェラール・ラベル制度で、フェアトレードに焙煎企業を巻き込み、おいしいフェアトレードコーヒーを全国のスーパーの棚に置きたいというアイディアから誕生したものである(本誌連載の(2)(3)および(8)を参照)。

この仕組みは、フェアトレードの理念に沿って生産しているコーヒーや紅茶などの農園をフェアトレード農園として認証する。そうした農園から購入したコーヒーを焙煎した場合、焙煎企業はそれをフェアトレードコーヒーとして、公認の「フェアトレードラベル」を貼ってその食品を販売することができる。英国では、フェアトレードタウンの認証をこの「フェアトレード財団」が行っている。認証を受けられる条件は以下の5点である。

(1) 自治体議会はフェアトレード運動を支持し、フェアトレード・タウンを宣言する決議を行う。また、自治体内での会合を始め、自治体の事務所や食堂においてはフェアトレードコーヒーや紅茶を提供する。自治体の決議に基づき、自治体は定期的にフェアトレードを推進するためのパンフレットの作成やイベントなどの広報活動を行う。また、市役所の中に担当者を設定し、関係先やテーマ等の調整をはからせる。
(2) 自治体内でのフェアトレードショップで、所定量(2品目以上)のフェアトレード商品が入手可能であること。
また、地域内での喫茶店や食堂でもある程度提供(販売)されていること(人口に応じてショップや企業数の目標を設定している)。フェアトレード・ダイレクトリー(業者リスト)も作成する。
(3) 地域の職場(不動産企業、美容院等々)や地域の団体(教会や学校など)において、フェアトレード商品が提供されていること。フェアトレードの理解を促進するため、教育的キャンペーンなども行う。
(4) 地域のフェアトレード運動(キャンペーン)に対して、自治体は支援を行う。また、とくにメディアも積極的な協力を行う。
(5) フェアトレード運営委員会(常設)を設置し、フェアトレード・タウンの推進を継続するための仕組みをつくること。この運営委員会には、市議会の代表、キャンペーン担当者、学校・教会・企業の関係者等を委員として選ぶ。
この5条件に合致した場合、フェアトレード財団は申請に基づき認証を審査を行い、合格なら認証を提供することになる。そして、5年間に110タウン以上が認証を受けてた。

英国では、例えばガースタングの場合、フェアトレード都市第1号宣言の推進力となったのは、前述のようにOXFAMであった。当初は地域の喫茶店やレストランに対しフェアトレードコーヒーを使ってくれるよう運動してきたがうまくいかなかった。1997年に教会に対して普及を図った。礼拝後の懇親の場でフェアトレードコーヒーを使ってもらおうとした。6つある教会のうち3つが賛同してくれた。また、1997年にフェアトレードガイドを作成したが、その時にはガースタングのフェアトレードショップはまだ5店舗のみだった。1999年にOXFAMはガーナのココア農家に焦点をあてたキャンペーンを行った。高校やユースクラブ、国際協力協会的な団体の協力を得た。2000年には、地域のレストランでフェアトレード・ミール(食事)週間のイベントなどを行った。
タウン宣言に至る契機となる動きとしてはいくつかあった。一つは地元の学校、教会との結びつきである。とくに教育的観点からのアプローチが功を奏した。政治家へのアプローチや地元の産業界へのアプローチも重要であった。

しかし、さらに注目すべき動きとしては、地元の農家の問題と結びつけてキャンペーンを行ったことである。開発途上国の農家の問題と地元の農家の問題とは同じものがあることに気づき、それを結びつけたキャンペーンを行なったことが農家の支持を得ることにつながった。
日本のフェアトレード都市宣言第1号はどこだろうか。
しかし、日本ではいざとなると大変難しい状況にあることに気づくことになるだろう。一つは議会の決議である。日本の国会議員の国際的関心の低さはよく感じるが、自治体の議員がどれほど開発協力問題に関心をもっているか。市長が個人的関心をもっても、議員を説得する困難に直面するだろう。まして、地域の産業界の開発協力への関心も高いとは言えない。

日本の場合は、自治体議員の理解には、一つは「地域の国際化」との関係付け、もう一つは「産直」とフェアトレードとの関係付けが課題となりそうだ。第3にはフェアトレードショップがもっと増えることと同時に、地域のNPOの理解と連携が鍵を握ることになるだろう。

次号へつづく