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特定非営利活動法人全日本健康自然食品協会

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会報連載記事

フェアトレード(17) ATJと民衆交易の実践

(株)オルター・トレード・ジャパン(ATJ) 近藤康男

緊急支援活動からモノを通した永続的な連帯へ そして、NGOから草の根の商社へ

ATJは、1980年代半ばの国際砂糖危機により大量に発生した、フィリピン・ネグロス島の飢餓難民とりわけ子供たちに対する緊急支援のために結成された日本・ネグロスキャンペーン委員会(JCNC)を生みの親として、1989年に設立されました。
JCNCは現在もNGOとして活動をしていますが、ATJは、支援活動に参加した生活協同組合や市民団体・個人の出資により株式会社として出発しました。ネグロス現地では緊急支援の後、経済的自立を手助けするために地場の伝統的製法によるマスコバド糖の輸出会社潟Iルター・トレード・コーポレーション(ATC)が設立され、ATJはいわばその日本側パートナー会社として出発したとも言えます。

コトからモノへ 零細生産者の作った無農薬の地場バナナが日本の市民(生協)の協力で初めて国際マーケットに登場そして生産者・消費者の負託しあう関係へ

バナナは、フィリピン周辺を原産地とし、列強の植民地進出と共に世界に広がり、現在は多国籍食品コングロマリットの手で取り扱われている、いわばコーヒー同様植民地主義とグローバリゼーションの申し子のような産品です。
プランテーションバナナと違い、バランゴンバナナは、フィリピン国内、多くは不便な山奥に散らばる2千数百の生産者の手で作られ、湧き出る泉のようにチョロチョロと小川に流れ込み、支流から本流に合流し、海に注ぎ込み、そして海を越えて日本に届けられる食べ物でありメッセージです。バナナを通じて遠いフィリピンの現実が届けられ、バナナを通じて交流が始まり、暮らしや食を負託しあう関係が成立するのです。

バランゴンバナナにより民衆交易の基礎ができ そして日本の生協に学び育てられて来た

バランゴンバナナに続いて、92年環境保全型のエコシュリンプ、93年オーガニックコーヒーの取り扱いへと広がり、現在13ヶ国(アジア6ヶ国、アラブ1、ヨーロッパ1、アフリカ1、中南米4、“北”の国は韓国とフランス)から10種類の食べ物を輸入し、370の取引先に納入をし、約20億円を取り扱っています。新しい商品としては、東チモールとラオスのコーヒー、パレスチナのオリーブオイルなどがあります。
認証の有無を別にして大半は有機農産物であり、イギリスのフェアートレード団体TWINから購入している中南米のコーヒーなどを除き、ほとんどの商品はATJが直接産地パートナーから輸入をすると共に、多少とも生産に関与し、モノを通して消費者(生協組合員など)・生産者の連帯と交流を続けています。
ATJの取引先は自然食品店など約370ありますが、取引の大半は株主生協で、売り上げの85%以上を占めています。そしてその基盤は生協独特のシステムである共同購入、個配(宅配)にあります。生産者・消費者の交流・連帯のプログラム、産地のパートナーとの共同での産地作りなども生協の事業モデルと重なります。

失敗と危機の繰り返し 他者と他者の媒介者としての困難さ

ATJは設立以来15年、20億円に近い売り上げとなりましたが、何度も失敗や事業の中断に遭遇もし、農産物・零細生産者(でない生産者もいます)そして不安定な第3世界の持つ宿命により、常に危機を孕みながらの経営です。
台風被害によるバナナの欠品や事業中断、作付けを増やして収入増を期待した生産者のエコノミーの論理がエコロジーの反撃を受けての連作障害・病虫害、欧米流の有機認証システムがもたらした保守的なイスラム共同社会との緊張によるエコシュリンプ事業の中断……
日本(消費者)と産地(生産者)とでは時間のスピードも違います。商品、更には食に対する価値観も違います。
そして食品の宿命として異物混入や品質変化は時に避けられません。食の安全・安心に対する要求が極端に強くなっており、スピーディーな対応を求められます。しかし負託し合う関係は結局産地・生産者の力の範囲でしか進みません。ATJは産地の現実に立ち、産地から逃げず、媒介者として異なる価値観と時間とをつなぐ毎日です。

民衆交易のささやかな展望 コトからモノへ、そしてモノとコトの融合へ

民衆交易は、
事業としては:
人(生産者)と人(消費者)とが協働する主人公として、食べ物を作り・流通させ・消費する、オルターナティブで持続的な民衆経済の仕組みを運営すること、
運動としては:
「食と大地」とを自分達の手に取り戻し守る、「食べ物運動」、だろうと考えています。
今、遺伝子までも、そして近代技術という形で、生産が生産者の手の届かないところに奪われ、食べ物の価値や安全に対する判断能力を失った消費者は第3者のお墨付きに頼る時代です。グローバリゼーションはそれを更に押し進めようとしています。ATJは単に仕組みを作るだけでなく、その仕組みを代替システムとして持続させると共に社会化させるささやかな試みを続けようとする会社でありたいと思います。

次号へつづく