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会報連載記事

フェアトレード(16) 開発途上国の小規模生産者の自立とフェアトレード

拓殖大学国際開発学部教授 長坂寿久

フェアトレードは、開発途上国の小規模農家(生産者)の人々の自立を支援する活動であると書いてきた。では、日本のフェアトレードNGOは、現地の小規模農家(生産者)の人々とどのような関係を作っているのだろうか。今回はその点について少し具体的に紹介しよう。

フェアトレードの取引(活動)では、現地の小規模生産者に「協同組合」を作ってもらい、その協同組合と関係を持つことになる。その組合は、民主的に運営され、透明性があり、一定のフェアトレード基準に基づき運営されることが条件となる。
しかし、生産者を組織化して協同組合を作ってもらうのは実に大変である。フェアトレードNGOにとって、取扱品目のすべてについて、そうしたやり方をとることは大変なため、それら生産者の組織化を支援している現地NGOと連携して、その現地NGO経由で仕入れているケースも多い。

また、扱い品目の多様化の観点から、各地(国)のフェアトレード団体から売り込みも多くなっており、それらを仕入れる場合もある。さらに以下に述べるFLO(ラベル)の登録生産者から買い付ける場合もある。どの形態であれ、フェアトレードである。しかし、フェアトレード「NGO」と呼ばれる団体は、現地生産者による協同組合(NGO)と生産段階において直接付き合って取引を行っている部分(ケース)のある団体と定義しておいた方がいいと思われる。
フェアトレード基準としては、国際オルタナティブトレード連盟(IFAT)や、国際フェアトレードラベル機構(FLO)などがある。しかし、日本のフェアトレード団体でIFATに加盟しているのは、フェアトレードカンパニー(ピープル・ツリー?グローバル・ビレッジ)、ネパリ・バザーロ、ぐらするーつの3団体のみである。
またFLOについてはフェアトレードラベル・ジャパンがある。つまり、日本のフェアトレードNGOの多くは国際的基準を睨みつつ、独自の基準を設定して取り組んでいるものが多いともいえる。
フェアトレード基準は、これら組合(小農家の場合は10〜20農家ほどと小さいものが多い) の運営は民主的であり、透明性を確保していることを条件としている。具体的にFLOの場合は、会議は定期的に開催され、その会議の「議事録」があることが必須となる。

また、基準の中心的部分として、「自立に必要な公正(フェア)な価格で仕入れる」こととなっている。コーヒーの場合、FLOでは1ポンド(454グラム)126セントを最低買付け価格としている。つまり、これが自立に必要な搾取のない公正な価格ということでるる。この価格を設定したのはコーヒー価格が高騰していた90年代初めであった。
現在のコーヒーの国際価格は1ポント70セント程である。すなわち、FLO登録生産者団体と取引するフェアトレード団体は、国際価格が70セントの時に、1.8倍の126セントで買い付けていることになる。つまり、その差額が自立のための支援金を意味する。
もう一つフェアトレードが重視している取引形態が「前払い」である。コーヒーの場合、収穫し、輸出してお金を手にするまでには半年近くかかる。その間の生活をしのいだり、必要な苗木や肥料を買うために、地元の高利貸しからお金を借りる必要が出てくる。こうして彼らの収穫・輸出後の収入は借金返済と金利にもっていかれ、自立は難しくなる。そこで、フェアトレード運動は、原則として前払い金を支払うことを重視しているのである。
また、フェアトレード活動を通じて、生産者の団体である協同組合にはこれら自立支援基金が溜まっていくことになる。そこで、その自立基金をどう生産者のためのプログラムへと発展させていくのかが、もう一つ大きな課題となる。これは現地側協同組合やNGOの役割が中心となるが、日本側のフェアトレードNGOも大きく関わることになる。
さらに、他に重要な基準はいくつかある。とくに労働環境のあり方が重要である。児童労働、女性の強制労働、団体交渉権、組合の組織化などである。

日本のフェアトレードNGOがとくに行っている最も意味あることの一つは、技術指導である。日本市場は世界の中でも、消費者の選好が非常に厳しいことで知られている。
日本市場のニーズに合致した品質や特色を出すことが重要となる。そのため日本側で市場に合った製品を開発・デザインすると共に、縫製などの生産技術を高めるため専門家を現地に派遣して技術指導を行う。その際、現地の素材・材料を使い、現地の伝統生産技術を生かした生産技術の指導が重要となる。
IFAT加盟3団体などは、そうしたデザイン開発や技術指導をかなり積極的に行っているNGOである。他方、日本のフェアトレードNGOが何故IFATに加盟せず、あるいはFLOのラベル認証を受けていないのかというと、一つはこの国際基準がやはり厳しい面があること(前私金など)、ラベルについてはライセンス料が日本のフェアトレードNGOにとっては安くないこと。価格構成(仕入れ価格から販売価格まで)の内訳の公表(透明性)が求められること、日本のNGOはまだ小さく、国際機関と付き合うだけの人的能力をもっていないことなどがあげられている。

さて、企業が今後、CSRの観点からフェアトレードに取り組もうとする場合、こうして苦労して現地生産者を育成してきているフェアトレード団体から単に買い付けるだけでなく、企業自らが、現地生産者組合・NGOと直接的に付き合いつつ、フェアトレードを企業内に内部化する姿勢が必要であろう。

次号へつづく