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会報連載記事

フェアトレード(12) 復興開発支援から始まったピースウィンズ・ジャパンのフェアトレード事業

ピースウィンズ・ジャパンフェアトレード部チーフ松信章子

◆はじめに

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は紛争地や災害被災地で、緊急人道支援および復興・開発支援を行っているNGOです。1996年、当時フセイン政権下で抑圧されていたクルド人国内避難民を始め、イラク北部の困窮した人びとを支援するために設立されました。以来、世界各地で支援を行ってきました。現在は、中東、アジア、アフリカの9地域での支援のほか、新潟県中越地震の際は被災地小千谷市にもて緊急支援部隊を派遣いたしました。

◆試行錯誤を続けるPWJのフェアトレード

PWJではフェアトレード事業は復興・開発支援の一端として位置づけられています。目指していることは、生産者の収入向上を図り自立を助けること。また、フェアトレード商品を媒体として、支援地や発展途上国の人たちが置かれている困難な状況に関心喚起を計ること。さらには商品販売を通じてPWJの活動資金を獲得すること。PWJのフェアトレード事業はこのような目的を持っています。
PWJで、ある程度の収益規模をもっているフェアトレード商品としては、ピース・コーヒーがあります。グァテマラ産と、東ティモール産があり、両方とも固定客を持ち、軌道に乗ってきました。その他もさまざまな試みをしています。たとえば、アフガニスタンやモンゴルなど支援地の伝統技術を利用して製品化を試みていますが、安定供給には至っておりません。こういう試みで難しいのは、売り手(作り手)の技術をどのように買い手の要求とマッチできるかということで、失敗談には事欠きません。胡瓜ですら一定の形を求める日本人に、温もりはあっても少しずつ形の違う製品を「手作りの良さ」で売るには限界があります。
「均質」という工業化された世界の人びとの概念を、そうでない世界に住む人びとに要求するのでしたら、それができる環境を作るところからはじめる必要があります。それは容易なことではありませんが、東ティモールでは、何とかそれを実現できました。

◆東ティモール産ピース・コーヒー

ご存知のように、東ティモールは長年の内紛のあと、ようやく独立を勝ち取った新しい国で経済は脆弱を極め、ポルトガル植民地時代から育成されていたコーヒーが、現在唯一の外貨獲得可能な産業です。コーヒーは、レッドチェリーと呼ばれる赤い完熟した実を、脱肉、発酵、乾燥、脱穀、選別と長いプロセスをかけて精製します。長らく外界から遮断されていた東ティモールの農民は、国際仕様の品質についての知識もなければ、良質のコーヒーを自身で精製するための道具や技術も持っていませんでした。そのため、保存が効かない摘んだままの実を、不良豆を取り除くこともせず、安値で売るほか現金収入がなかったわけです。
私たちは必要な機材を提供し、一緒になって汗を流して働きながら、きちんとプロセスを踏むことを繰り返し説明し、均質かつ良質な豆を精製すれば、その付加価値によって、より多くの収入を得られることを実証することができました。初年度は35所帯だった参加農民は、2年目は一挙に135所帯に増えました。味や品質面から言えば、東ティモール・コーヒーの希少性に加えて、丁寧に手作りしたコーヒー豆に、日本の専門家の方がたからお褒めの言葉をいただいています。今後は、より多くの農民の参加を求めていくと同時に、収穫の増大に対してどのように販売網を拡大していくかという課題に面しています。

◆今後の戦略

PWJは店舗を持たず、フェアトレード商品はオンライン・ショップやイベントで、また卸を通じて販売しています。ショップは最近、商品群を増やしました。デザインも楽しく華やかなイメージに一新し、クレジット・カードも使用できるようにいたしました。効果は抜群で、ショップでの販売額が急増しています。私たちは、フェアトレードであるからと言うよりも、美味しい、きれい、便利というように商品自体の魅力で買っていただけるような商品を開発したいと考えています。気に入ったものがフェアトレードの商品だったら、買い手にとっても売り手にとってもまさしくフェアで負担のない取引だと思うからです。もちろん、これは言うほど簡単なことではありませんが。
最後に、フェアトレードというコンセプトに対し、一般の方がたの共感を得て、セグメントとして確立・発展させるためには、フェアトレード商品を扱う企業やNGOが力を合わせ、メディアも積極的に巻き込みながら、みんなで声を挙げて相乗効果を図っていく必要があるのではないかと思います。

〒154-0015 東京都世田谷区桜新町2-11-5
特定非営利活動法人(NPO) ピースウィンズ・ジャパン
フェアトレード部チーフ松信章子
電話:03-5451-5400 ホームページ:http://www.peace-winds.org

次号へつづく