
拓殖大学国際開発学部教授 長坂寿久
今回はフェアトレードの認知度の高い欧州、とくに英国についてその普及状況を紹介しよう。英国はOXFAM(オックスファム)などの有力なNGOによって、フェアトレードではすでに長い歴史をもっている。しかし、英国といえども、急速に定着してきたのは90年代であり、さらにここ数年に急速に売上を伸ばしてきている。
英フェアトレード財団の調査では、フェアトレード商品の売上額は、1998年は1700万ポンドだったが、2002年には6300万ポンドで、この4年間で3.7倍の伸びを示した。フェアトレード・コーヒーは国内の粉コーヒー市場では14%を占め、また、フェアトレード・チョコレートの2000年の売上は前年に比べ倍増の600万ポンドであった。
フェアトレード商品は、日本ではまだスーパーマーケットの棚に陳列されて売られていることはほとんどないが(東急ハンズやジャスコなどで例外的にはある)、英国では、コーヒー、紅茶、ココア、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、砂糖、蜂蜜、ジュース類、干し果物、新鮮な果物(マンゴー、パイナップル等)、ケーキ、ワインなど130種以上のフェアトレード商品が、通常の商店やスーパーマーケットで売られている。つまり、消費者は日常の買い物の中で、フェアトレード商品を買うかどうか、その選択が可能な状況に置かれている。残念ながら、日本ではフェアトレードに関心のある人がフェアトレード・ショップへわざわざ行くかあるいは通信販売で購入するしかなく、消費者の日常レベルにまでフェアトレード商品は下りていない。
英国にはすでに「フェアトレード・タウン」を宣言する町が登場している。最初の宣言町は、2000年3月に英国北西部のガースタングである。それが現在では27の町が宣言を行うまでになっている。
英国でのフェアトレードの最近の展開について、最近の動きを紹介してみよう。その急進展ぶりには驚かされる。1997年にフェアトレード・コーヒーを公共施設やレストランで提供するよう本格的にキャンペーンを始めた。議会では多くの政治家の支持を得て、議員食堂などでのコーヒーはフェアトレード商品に切り換えられるようになった。98年には、政治家のバックアップも得て、多くの大企業で社内の社員用のコーヒーがフェアトレード・コーヒーに切り換えられていった。地方自治体でも市議会でコーヒー、紅茶はフェアトレード商品に切り換えていく決議が行われていくようになった。99年になると、社内の自動販売機にはフェアトレードマークのコーヒー、紅茶、ホットチョコレートを売る大企業が増えていった。2000年には、コスタ・コーヒーなどのコーヒー・チェーンがフェアトレード・コーヒーも選択肢としてメニューの中に入れるようになった。2001年には、運輸など多くの労働組合が社内のコーヒーや紅茶にはフェアトレード商品を使うよう決議していった。前述のように、この年始めて「フェアトレードの町宣言」をガースタングが行った。2002年、スーパーマーケットのセインスベリーが自社ブランドのフェアトレード・コーヒー(豆と粉)を導入した。それに追随して、生協1000店もコーヒー豆を売り出す。
2月には、ブレア首相もフェアトレード・キャンペーンに協力を始め、支持を表明した。英スターバックスもメニューの中にフェアトレード・コーヒーを入れた。2000年に英生協が1000の店舗でフェアトレード・バナナをはじめて導入、他の多くのスーパーも1年内にこれにならっていった。これを契機に2002年以降新鮮な果物もフェアトレード商品に加わってくる。パッションフルーツ、マンゴー、パイナップル、それにケーキなど。2003年に英国のフェアトレード商品数は130品目以上となる。
英生協はフェアトレード商品への取組みで、2002年に名誉ある小売業者賞(マルティプル・リテイラー賞)を受賞している。同じく生協は、フェアトレード・キャンペーンで「小売業週間賞」「2001年小売業者賞(マーケティング部門)」を、そして2003年には「世界理解ビジネス賞」「持続可能な開発賞」も受賞した。スーパーの生協やセインスベリーズの近年のフェアトレードへの取組みには目を見張るものがある。