
日本ブルーベリー協会 副会長(元千葉県農業大学校研究学科主幹) 玉田 孝人
◆9月の気象
今年の8月も、日中の気温が30度を超える真夏日や、夜間の気温が25度以上の熱帯夜が続きました。その暑さは、ヒトはエアコンや衣服でしのぐことができますが、ブルーベリー樹は自体ではなにもできません。栽培者の灌水による土壌水分の補給でしか暑さをしのぐ方法はありません。庭の樹には、十分な灌水をしてあげたのでしょうか。9月の気温は月の前半と後半とで大きくちがいます。前半は夏の影響が残って暑い日がありますが、後半には気温はしだいに低くなり、いわゆる、秋らしくなってきます。大きい特徴は、なんといっても台風シーズンです。
◆9月の樹
{1}台風の害
(1)強風
台風(特に、強風)による樹の被害はさまざまです。根が浅い樹は根こそぎ掘り起こされ、主軸枝が少ない樹は地上部が折れたりします。経済的に大損失です。
また、枝が折損したり、落葉が多くなります。そのため、樹体内生理が乱れて春に咲く花が秋に咲く、狂い咲き"がおきます。そのような花は、もちろん結実しませんし、翌年の開花数が少なくなります。さらに、落葉によって光合成量が少なくなり、貯蔵養分の蓄積が不良となるため翌年の樹の生長が弱ります。
経済栽培では強風対策が取られています。普通は、園の周囲に防風林を作るか、防風ネットを張っています。庭植えの場合、特別な対策は取られていません。ブルーベリーのほかに数種の樹木があるためです。
(2) 雨
台風は、また、大量の降水をもたらします。雨による被害は、主に、土壌浸食と滞水によるものです。
土壌浸食は、特に傾斜が強い園で激しく、表面の土が侵食されるため根が露出します。そうなると、樹勢が極度に弱ります。有効な対策法は、ほとんどありません。修復は可能で、黒ボクや砂質とピートモスを半々ずつ混合した用土を露出した根の周りに施します。そうすることで、樹勢も回復します。
滞水は、粘土質が多い排水不良の園で問題になります。降った雨が土壌表面に溜まったり、植え穴の部分に溜まるため、酸素不足から根が障害を起こします。酷い場合には樹は枯死してしまいます。このような例は、庭植えのブルーベリー樹でも各地で見られます。
基本的な滞水対策は、植え付け以前に土壌を軟らかくして排水を良好にする土壌改良と、高畝にして植え付けることです。植え付け後は、根の張っている土を交換することは極めて困難ですから、樹列間に溝を掘って排水を促すことです。
{2}枝の伸長
ブルーベリーでは、9月になっても多種類の枝が伸長しています。秋枝(9月に発生)、夏枝(8月に発生し、約10〜30cmになっている)、そして春から伸長を続けている強いシュート(1?以上になる)があります。
秋枝は、あまり好ましくありません。秋の低温で充実不良になり、冬季の低温障害を受ける危険性が高いからです。一方、夏枝と強いシュートは、樹形(冠)の拡大のために必要です。
庭植えのブルーベリー樹を観察してみてください。枝数が少なく、短い枝が多く着いている樹は、全体的に生育が弱っている証拠です。そのような樹には、翌年の3月、肥料を少し多めにやって、樹勢の回復をはかりましょう。
{3}成熟期
ほとんどの品種では、成熟期は既に終了していますが、極晩生種では9月上〜中旬まで続きます。果実はしだいに小さくなりますが、日持ち性のよいのが特徴です。
庭植えのブルーベリー樹が極晩生種でしたら、他の種類の果実とミックスで、ブルーベリーの風味を楽しむことができます。また、ジャムやジュースを作りたいときに、いつでも使えるよう冷凍貯蔵もできます(8月号を参照してください)。
◆9月の作業
{1}灌水
台風で雨が多いといっても、定期的ではありません。
晴天が3〜4日続いた場合、庭植えでは必ず灌水します(灌水量は8月号を参照してください)。一晩中(あるいは1日中)雨が降った場合には灌水の必要はありませんが、通り雨のような場合には、通常どおり潅水します。鉢植えの場合には、毎日、朝、灌水します。
{2}除草
除草は、年間を通して必要な管理ですが、これまであまり触れませんでした。樹の周囲にチップやバークなどを厚さ10cmくらいマルチすることを勧めているからです。しかし、夏の間に風で飛んできた種子から、勢いのよい雑草が生えてきます。9月の雨と気温は、種子の発芽を促進するからです。雑草はマルチをかき分け、根っこごと取り去ります。
雑草の種類は、季節によって、また、北と南の地方でもちがいます。さらには、土壌酸度(pHの高低)によってもちがいます。雑草の観察も楽しいものです。
{3}病害虫防除
ブルーベリーは無農薬栽培に向く、あるいは、無農薬栽培が可能である、という意味を再確認しておきます。
ブルーベリーの樹、枝、葉、花、果実、根とあらゆる器官は、病気や害虫の被害を受けます。しかし、他の種類の果樹と比較して、その程度が軽く、壊滅的な被害が少ないのが特徴です。病気や害虫の生息範囲(密度)は、栽培面積の広がりと比例しています。すなわち、面積が広くなると(樹が多くなる)、生物相が単純になり、特定の病気や害虫が大発生する危険性が高くなります。また、手による捕殺にも限界があります。
捕殺による害虫防除は小規模の場合しか対応できません。
庭植えの場合には、被害を受けている枝や葉を除去し、害虫を捕殺することでほぼ完全に防ぐことができます。
ブルーベリーの庭植えの最大の特徴は、完全に無農薬栽培ができることです。害がみられる病気、寄生している害虫は、枝や葉を除去したり捕殺します。9月になると、ハマキムシ、ミノムシ、ケムシなどの害が多く見られます。
ゴム手袋をはめ、長火箸などを使って捕殺しておきましょう。素手では触ってはいけません。
◆果実の利用
8月号でも触れましたが、極晩生種には「眼にいい」効果をはじめ、がん、糖尿病、循環器疾患、脳梗塞など、生活習慣病の予防効果が高い抗酸化作用" のポリフェノール含量を多く含むものが数多くあります。
7〜8月号に続いて果実の利用法を紹介します。
(5)ブルーベリーソース
ジャムより甘みが少なく、さらっとした感触のソースは盛りの時期につくりおきしておくと、お菓子や料理に重宝します。パンケーキやアイスクリーム、ヨーグルトのソースとして、クリームチーズに混ぜてディップやドレッシングにしても新鮮なおいしさです。
(材料)
ブルーベリー300g 水100cc 砂糖100g
レモン汁大さじ1 ラム酒大さじ2
(作り方)
1 ブルーベリー果実は、水、砂糖とともにホーロー鍋に入れて火にかける。
2 沸騰したら中火にし、アクを取り除く。弱火にして実をつぶしながら20分くらい煮込む。
3 粗熱(加熱調理後の熱)が取れてから、レモン汁、ラム酒(なければブランデーでも可)を加えて仕上げる。
(6)ブルーベリーの果汁
ブルーベリーは、ジャムや生果を菓子類の飾りとして使う以外にも使い方がある。
果汁の作り方(加熱法)
(材料)
ブルーベリー1s 白ワイン(辛口) 180cc
(作り方)
材料を鍋に入れ、80〜85度くらいになるまで中火でふたをしながら加熱し、後は余熱で5分ほどおいて、ブルーベリーから果汁がでたら仕上がり。果実の形を崩さずに、果汁をえることができる。
お菓子用は同様に加熱し、50ccのハチミツを加える。粗熱が取れたら、静かに果汁と果肉をザルにあげ別けておく。
果汁は、次のように使うことができる;
・ドレッシング
・魚料理用のソース、肉料理用のソース
・フルーツサラダ、魚介類サラダ用のソース
・食前酒
一方、果汁をとった後の果実は、デザートの飾りや肉や魚料理に添えたり、また、マリネに使ったりすることができる。
(7)その他の食べ方
同じ色のためか、あずき、あんとも相性がよく、フルーツ白玉、冷しぜんざいなどに加えてもよい。
また、生のブルーベリーに香りのおだやかな紅茶(セイロンブレンドなど)を注ぎ、ブルーベリーティーにしたりとさまざまな利用法が楽しめる。
付記本誌7〜9月号までの果実の利用の記事は、日本ブルーベリー協会編1997. ブルーベリー―栽培から利用加工まで―から引用しました。