
日本ブルーベリー協会 副会長(元千葉県農業大学校研究学科主幹) 玉田 孝人
◆5月の樹
3月から4月にかけて、ブルーベリー樹には劇的な変化が見られました。冬の間休眠していた芽は、3月になり気温が高まるにつれて少しずつ膨らみ始めました。4月になって開花が始まり、花が散り始めた下旬には小さい果実になっていました。新しょうは、開花が始まってから急激に伸び出しました。
5月は新しょう(春枝)が盛んに伸長する時期です。また、幼果は目に見えて大きさを増しています。
■枝(葉)の伸長
緑葉は植物の生命の根源です。葉がなければ、植物は生きていけません。植物は、葉による光合成〔緑色植物が光のエネルギーを用いて、空中の二酸化炭素と根から吸収した水から有機物(炭水化物)を合成〕作用で生存しているからです。
ブルーベリーの新緑(春枝の伸長、春葉)は、例年、4月中旬の開花時期から始まり(関東南部)、6月下旬〜7月上旬まで続きます。新葉は黄色がかった淡緑色ですから、また、目を楽しませてくれます。その美しい新葉はやがて展開して完成した大きさになると、光合成作用を活発に行うようになり、ブルーベリー樹の生育、果実収量および品質を大きく左右します。5月の小さい果実(幼果)が成熟期までの期間に、風味があっておいしく、機能性の高い果実にまで発育し成熟するのは、初夏までに展開した春葉の光合成で作られた有機物によっています。あわせて、春枝自体の充実をもたらし、翌年に結実するための花芽を着けるためにも春葉による光合成が必要です。このようなことから、多数の春枝(葉)をいかに健全に伸長・生長させるかが重要な技術になります。
なお、光合成についての解説は専門的に過ぎるため、ここでは触れませんでした。
■果実の生長
5月、ブルーベリー果実は目立って大きくなります。特に果肉部の肥大によるものです。
果肉部は人がおいしく食べる部分ですが、ブルーベリーにとっては種子が健全に発育するために必要な栄養分の貯蔵場所です。すなわち、果肉部は葉で作られた光合成産物が蓄積されるところです。
果肉内部では種子(1oくらいの大きさのものが、1果中およそ60粒くらい)が発育しています。その栄養分もまた、春葉による光合成産物です。
種子の発育と果肉の肥大との関係について詳しく説明するのは難しいのですが、普通には、果肉の肥大は、種子が自体の発育のために積極的に栄養分を引っ張りこむことによると考えられています。たとえば、同一品種(樹、枝)で同一収穫期の果実を比べると、種子数が多い果実は大きく、種子数が少ない果実は小さいのが普通です。
■根(地下部)
根は、樹の生育に必要な水分および養分(肥料分)を確保するために年間をとおして活動しています。ブルーベリーでは活動が盛んな時期は春と秋の2回です。5月は、樹自体の生育を促進し、果実を肥大させるために活動している光合成作用と連動して、積極的に水分と肥料分を吸収しています。
また、根は肥料分の吸収力が高い新根を発生させ、吸収量の増大のために土壌中にできるだけ広く、深く伸長する作用を営んでいます。そのエネルギーは、やはり光合成による産物です。
◆5月の作業
関東南部から南の地方では、幼果の生長期間中の管理となります。一方、東北北部や北海道では5月初旬〜中旬以降の開花終了後になります。
■摘果
多くの種類の果樹では、大きさがそろった果実を毎年、安定して生産するために、幼果の段階で肥大の劣るもの、病害虫の被害果、変形なものなどを間引く摘果作業が行われています。これは、一定量の光合成産物を少ない果実数で分配するという意味になります。
ブルーベリー栽培では、普通、摘果作業はしません。冬季剪定で枝を整理していることと、病害虫による被害果がほとんどないことによります。しかし、極度に樹勢の弱い樹では、樹勢回復のために摘果(あるいは花芽を全て取り去る)が勧められます。また、5p以下の短い枝の幼果、葉が着いていない枝(ブルーベリーでは果実を着けても葉を着けない枝がよくある)は枝ごと切除して、樹全体の結実数を少なくします。そうすることによって大きさ、成熟期がそろった果実が生産されます。
■潅水
毎月のことですが、ブルーベリー栽培では定期的な潅水が重要です。3〜5日間隔で午前中に行います。潅水量は、次の点を目安にしてください。
・幼木(植え付けてから1〜2年)では5〜10?。
・若木(植え付け後3〜5年)では15〜25?。
・成木(植え付け後6〜7年以上で樹高が2?、樹冠幅が2?以上の大形の樹)では30〜50?。
・鉢植えでは、鉢の上面からあふれ出るくらいタップリと潅水するのがコツです。
■施肥
多数の葉を着けた新しょうが伸長し、光合成作用を活発に行うためには、根から十分な肥料分の吸収が必要です。その肥料分の補給が、いわゆる施肥です。
実際の施肥は、気象条件、土壌の種類、タイプと品種、樹齢、樹勢(樹形の大きさ、新しょうの多少)などを考慮して行う必要があるため、最も難しい技術の一つです。庭植えの場合、筆者が勧めている例を挙げました。
■有機物マルチ
庭植えの場合、根の健全な生育を促進するために土壌の乾燥を防ぎ、雑草の繁茂を防除する必要があります。そこで、バークやチップなどの有機物マルチが勧められます。これらは肥料分が少なく、分解が遅いのが特徴です。厚さが15〜20pになるよう、株もとから半径50〜70pくらいの所まで被覆するのが最も効果的です。
■病害虫防除
ブルーベリーは病害虫の被害が少ないのが特徴です。枝、葉、花や果実、根に病気や害虫が寄生しない、あるいは害がないという意味ではありません。多数の病害虫の加害が認められますが、被害が少ないのです。
病気の被害で最も多いのは、土壌の過湿(粘土質で排水の悪い土壌)による根腐れ病です。樹勢が弱い、葉が小型で淡黄色である、花芽が着いていない、落葉しているなどの症状が特徴です。手で簡単に引き抜ける程度の根群で、細根はほとんどなく、黒褐色の荒い根が少し着いている程度です。被害樹の回復は困難ですから掘り上げて焼却処分します。植え替える場合には、その穴をもう一度掘り起こし、30p以上の高うねにして(もちろん、ピートモスと混合して)新しい苗を植え付けます。植え替えの時期は翌年の3月になります。
害虫の種類は季節によって違ってきます。5月は、葉や枝に毛虫類の発生が多くみられます。毎日、あるいは少なくとも3日に一度は庭に出て、害虫を見付けしだい枝や葉から取り去り、圧殺します。その場合、ゴム手袋をはめ、長い火箸などを使ってつまみ取り、土を被せて足で踏みつけます。この方法で十分に防除できます。農薬を散布する必要はありません。
家庭で育てる果樹は、無農薬栽培が基本です。そのような果樹はブルーベリーをおいてはありません。