
日本ブルーベリー協会 副会長(元千葉県農業大学校研究学科主幹) 玉田 孝人
3.ブルーベリーの誕生
前2回(本誌、5月および6月号)は、“食べる楽しみ”と“育てる楽しみ”と題して、ブルーベリーの魅力を取り上げました。初回はブルーベリーが健康果実といわれる秘密は小粒で果皮ごと食べられること、爽やかな甘酸っぱい風味、そして明青色の果皮にあることを紹介しました。そして2回目には、ブルーベリーは全国各地で育てられることも魅力の一つであり、樹、花、果実、紅葉と四季折々における楽しみについて述べました。
この号では、主に、ブルーベリーの分類、誕生、および種(種類、タイプ)の特徴について概説します。
◆植物学的分類
1.ツツジ科の果樹
果樹(生物は全て)は、系統的な類縁関係に基づいて階級に分類されています(とくに形態的特徴から。こんにちでは細胞遺伝学的方法が多い)。最も一般的な階級表示は、科?属?(節)?種です。
ブルーベリー(Blueberries)はツツジ科(Ericaceae)スノキ属(Vaccinium)、シアノコカス節(Cyanococcus)に分類されます。「節」はさらに「種」に分けられ、「種」は(1)ハイブッシュブルーベリー(Highbush blueberry)、(2)ラビットアイブルーベリー(Rabbiteye blueberry)、(3)ローブッシュブルーベリー(Lowbush blueberry)の三つを含んでいます。
これらの3種は、樹高および果色から区分されたものです。すなわち、ハイブッシュとは樹高が1?以上の種を、ローブッシュとは1?以下の種を指します。ラビットアイとは、果実の発育過程でウサギ(Rabbit)の目のように紅くなる段階があることから名付けられました。
なお、「節」の学名であるCyanococcusはギリシャ語であり、英語ではBlueberryにあたります。Cyano(シアノ)はブルー(Blue、青)を、coccus(コカス)はベリー(Berry、小果)を意味します。
2.ブルーベリーはアメリカ原産
ブルーベリーは北アメリカ原産で、落葉性の低木性果樹です(常緑性のもの、および半低木性のものもある)。スノキ属植物は世界各地に自生していますが、ブルーベリーと名前がつくのはアメリカに自生する種のみです。
◆スノキ属植物の分布
1.世界のスノキ属
スノキ属植物が地球上に出現したのは、今からおよそ1万2〜3千年前の氷河期以降(地質時代では更新世にあたり、ほぼ旧石器時代のころ)です。世界には約200〜300種類あるといわれていますから、ブルーベリーやその仲間の果実は、国や地帯によっては旧石器時代から採集、利用されていたのではないかと想像できます。
スノキ属植物の原生地は熱帯地方に位置するマレー半島ではないかと推察されています。大陸別に自生数をみると、東南アジアには最も多くて70種、中国には約37種、北アメリカには26種、南アメリカには25種、ヨーロッパ大陸には少なく6種が挙げられています。
2.日本のスノキ属
わが国には19種のスノキ属植物が自生していますが、ブルーベリーと同種のものはありません。最も一般的な種には、高山帯に広く自生する落葉性低木のクロマメノキ、常緑性低木のコケモモがあります。平地に見られるものには、落葉性のナツハゼ、関東南部以西に分布する常緑性のシャシャンボなどがあります。これらの果実は、古くから趣味家あるいは土地の人達によって採集されジュース、果実酒などに利用されてきましたが、栽培化や改良は行われないまま今日にいたっています。
◆ 20世紀生まれの新しい果樹
1.ブルーベリーはアメリカ原産
ブルーベリーはどうしてアメリカ原産なのでしょう。
一つは、先住民(アメリカインディアン)によって古くから採集・利用されてきたことがあります。“ペミカン”(Pemican、野牛肉などを切り干しにして砕き、果実や脂肪をつき混ぜて固めた保存食品)はインディアン料理として有名です。
次には、アメリカ建国の租となったヨーロッパからの初期の移住者達(17世紀初頭のピューリタン)がたどり着いたマサチューセッツ州における冬季の厳しい寒さと飢えを乗りこえられたのは、先住民から分けてもらった乾果やシロップなどのおかげであったといわれています。このような移住者の生活体験が語り継がれ、後に「ブルーベリーが祖先の命を救った恩人」といわれるほどに、ブルーベリーはアメリカ人にとって歴史的な果実となったのです。けだといわれています。人間の食の歴史の上で、新しい果樹の誕生は極めて少ないものといえます。
2.20世紀生まれの新しい果樹
17世紀初頭、ヨーロッパからの移住者が命を救われたブルーベリーは、20世紀初頭まで、全く野生のままでした。当時の学問的背景では樹の特性をつかみ、栽培化することは困難であったと思われます。
1906年(20世紀初頭)になり、アメリカ連邦農務省が野生種の栽培化を試み、1908年に育種(品種改良)計画に着手しました。すなわち、国家的事業として始められました。このことから、ブルーベリーは「20世紀生まれの新しい果樹*」ともいわれています。
*関連して、20世紀(過去100年のうち)に新しく加わった果樹は、ブルーベリーとキューイフルーツの二つだけだといわれています。人間の食の歴史の上で、新しい果樹の誕生は極めて少ないものといえます。